タイムマシンに乗って甘酸っぱい時間へ『タイヨウのうた』

 先週某日、G社肉肉隊メンバーとランチに。ちょうど日本戦の日だったこともあり、「『代打オレ』ってジーコが言ったら、ブラジルの選手は誰もタックルできないんじゃない?」「いや、でもロベカルだけは弾丸シュートをキメてくるはずや」等々、冗談とダジャレ満載の1Hを過ごして、帰りにおみやげを頂いた。いただいたのは『タイヨウのうた』のチケット。ということで、さっそくありがたく拝見。
 さて、『タイヨウのうた』。主演は、アコギ1本で上京したというシンガーソングライターのYUI。本作が初めての映画出演となる彼女を支えるのが、塚本高史岸谷五朗麻木久仁子といった場数抜群の共演陣だ。お話は、XP(色素性乾皮症)という病気によって「太陽の光に当たると死んでしまう」身体になってしまった少女と、地元に住むサーフィンが趣味の男子高校生が出会って恋におちる、難病×純愛ラブストーリー。
 1点だけ脚本上で残念な箇所があるものの、なかなかによく纏まった作品。「懐かしくて清々しい空気が感じられる映画だったなぁ」などと思いつつパンフレットを読んでいたら、監督曰く「岩井俊二さんや宮崎駿さんの作品が好きで、『Love Letter』や『耳をすませば』のような映画になればいいな」と思って撮ったんだそうな。なるほどね。男子高校生が何者か、友達がビデオカメラで彼を盗み撮りして主人公に見せるくだりなんかは、岩井映画にありそうなシチュエーションですな。夢を追いたいが命の限りが近づいている才能ある少女と、日々をそれなりに過ごし「きっとこのまま平凡に年を取るんだろう」なんて思っている男子高校生。登場人物のまっすぐさや善良さを考えるに、親子愛や友情の匂いが入った『耳をすませば』と言えばわかりやすいんだろうか*1
 お題を考えれば言わずもがななことだが、本作にはホロリとくるポイントが多々々々々ある*2。しかし、それは難病モノから連想される「ジメジメした泣き」とは無縁の、太陽に向く向日葵のような*3さっぱりとした「泣き笑い」。きっとそれは本作のテーマが病気云々とは別物のところにあるからだろう。ちなみに、映画館を出た私の前を歩いていた女子高生と思しき3人組は、どこで泣いたとかどこから泣き続けてたとか話していたのだが、かなり序盤で泣き崩れていたらしい。
 この映画、どうやら主人公を沢尻エリカ山田孝之にスイッチして、この7月からドラマ化されるらしい。本作で残念だったポイントが、塚本高史扮する孝治と彼の高校のお友達たちとの絡みがあんまりなくて、ここをもっと描き込む時間があれば「白線流し」的青春群像にもなりえたのかなとも思ったところだったから、ちょっと楽しみだ。しかし、映画版はYUIが「歌えた」から良かったけれど、ドラマ版の沢尻は果たして歌えるのか?この作品、主人公の少女はストリートライブで人だかりを作ってしまうほどの才能ある歌い手、という設定なんだけど。
 まぁ、いずれにしても、タイムマシンに乗って甘酸っぱい時代へ飛び立っちゃうことができる映画です。ええ、私も飛び立ちましたとも。

*1:ちなみに私は、『耳をすませば』がジブリでNo.1、全映画内でもかなり上位にランクインするくらい好きなんだけど

*2:作中のとある転換点で岸谷五朗扮する主人公の父が言う台詞で私はホロリと来たのだが、父の言葉でホロリとくるとは、私はどっちかっていうとそっちに既に近いってこと・・・?愕然。

*3:しばらく向日葵を観るとこの作品を思い出しそうだ