危ぶむなかれ、行けば分かるさ。「サザンオールスターズ」

鶴の恩返し

 お気付きの人も多いと思いますが、このブログのタイトルはサザンオールスターズのとある曲の曲名をもじったもの。去年は4DAYS中2回、2005年の全国ツアーは北海道も含め5回ライブに足を運んだ私は、自他共に認めるサザン狂。であれば、焼肉話を書いている場合じゃない(昨日書きましたが…)。月曜に発表されたあの件について書かなくては。そう、サザンの「無期限休止宣言」の件です。
休止宣言自体については、こちらを↓
http://www.polastyle.com/polalife/15_11_04/15_11_04_09.html
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 今週頭にマスコミを賑わせた件について、桑田さんがラジオ番組「TSUNEISHI GROP SATURDAY NIGHT CRUISE KEISUKE KUWATA'S〜やさしい夜遊び〜」で語っていたので、そのコメントを。約25分あるのですが、憶測とか恣意を加えたくないので、あえて「(ほぼ)ベタ打ち」で。めちゃくちゃ長くてすみません。

 我々サザンは、絶対解散しません。しなくてもいいでしょ?したくないんですあんまり。そのことを前提とした上で解散宣言の理由を話すとすれば、まず最初に、私個人この30年間おかげさまであんまり休むことなくやらせてもらってたんですね。できることなら30周年が終わった段階で、少しネタづくりも含めて充電もさせていただきたい、と。別に私個人の話では、切羽詰っちゃいません。これまでの放電やり方も皆さんのおかげで楽しくやってこられました。別に身体が悪いとこがあるわけでもないし、プッツンもしてません。何かネタというか、知識というか、見聞というかそういったものをを広くしたいなと。誰かからとか何がしかからの影響も受けたいなと、そういう話でございます。もちろん誰かほかのミュージシャンとやりたいなというのも、ちったああるかもしれませんけどね。
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 あと、これが主な話なんですが、サザンというグループに関しては、2005年の「キラーストリート」という2枚組アルバムとそれに伴うツアーがあったんですが、私としてもメンバーとしても手ごたえを凄く感じるものがありました。2004年からレコーディングが始まって、2005年はロックインジャパンに出たりツアーをしたり、そういう年でした。手ごたえを感じたんですけれど、実を言いますとここでいったん私自身サザンとしてのネタをやりつくしてしまったという感じがありました。サザンとして曲を作る、ライブについてのアイデア、緊張感とか、メンバーに対する気持ちもろもろなんですけれど。ここで出しつくした感じというか、一杯一杯じゃないけど、そういう感覚をここで強く感じたのは事実。「だったらその時点で休業宣言すればいいじゃん」と言われるかもしれませんけど、そのまま2006年もサザンとして、欲張ったんでしょうか、やっちゃってて。2006年に「DIRTY OLD MAN〜さらば夏よ〜」という曲を作った時期に、ズルズルサザンでやってても、モチベーションは上がらないのに惰性でやっちゃってるグループの姿が目に浮かんじゃった。もちろんやろうと思えばできないこともないんですけれども、お客さんに姿も見せたいし。でも、どっかでお見せした旧態依然としたサザンの焼き直しを見ていただくことはできるかもしれないんだけど、それはファンの皆さんに非常に失礼だと思うし、自分もメンバーも非常に苦痛だと思うし。そんな気持ちが湧き上がってきまして。
 各メディアの皆さんが報道している「モチベーションが上がらない」という言い方は、私が今から2か月くらい前にファンクラブの会報誌の取材の中で話したことなんだけど、もしかしたら誤解を与えたんじゃないかと反省しています。「桑田、モチベーションが上がらない」と書いてあったんだけど「たった今モチベーションが上がらない」、イコール「もうやる気が起こらない」と聞こえちゃうんだけど、これは「このままサザンをずるずるやっていって、やる気が起こんなくても、活動を引き続きずるずるやっちゃってるとしたら、それはやだな」という話なんです。もちろん今はギンギンに上がってますからご安心ください。それから、キラーストリート」とその後のツアーをやって凄く手ごたえは感じたんだけれども、次にこれを上回る作品を作ることとかサザンのメンバーと一緒になって刺激やワクワクする感じとか新鮮味を感じる、納得できる作品を作ることは、もしこのままやっていったとしたらできないんだろうなあと思ったのは事実です。これは嘘をついてもしょうがないから言いますけどね。気持ちが盛り上がってないのに皆さんの前でやるのがやだと思ったんです。これも理由の一つです。
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 そして他に理由があるとすれば、グループとして休み休み30年やらせて頂いてはおりますが、(サザンは)大事な仲間なんです。でも大事な仲間とはいえ、仕事チームとしてお互いの関係というか、構造的にも精神的にもぐらついてくるというか錆びついてくるというか、ダレてくる、色んなものが慣れ合いになってくる。会社でもそういうことはありませんか?汚い話なんですが、垢とか膿とか一杯に溜まってきたような気がして。50過ぎた今だからこそ、バンドの今後の充実を図るためにも、この30周年を機に大掃除したりとか、一度解体作業を含めてやらなきゃいけないなあ、メスを入れなきゃいけないなあと。メンバーとかスタッフを含めて大所帯ですから、ほころびを直したりしたりしていきたいなあと思った次第でして。ほころびとかぐらつきとかがたつきとかには、一つにはせっかく優秀なスタッフとか暖かいファンとかが作ってくれた恵まれた環境の中でやらせてもらっているんですけど、だんだん私を含めて、これも一つの問題点ですが、甘えみたいなものが出てきたと思う。「サザン」という看板にぶら下がっているというか、甘えとかぬるま湯みたいな構造ができてきたと思う
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 これは「なぜ無期限にしたのか」という話に繋がるんだけど、今までもこの20年間くらい私やほかのメンバーがソロ活動をしていて、サザン本体は活動休止状態ということはしょっちゅうあった。うまい具合にタイミングを見計らってするっと活動再開という形を20年以上繰り返してきたんですよね。サザンはライブで復活という形が多かったんですけれど。ところがメンバーのソロ活動が、本人がソロ活動に納得しようがしまいができまいが、皆メンバーが私に気を使ってくれてますから、何か新しい手ごたえをつかむ前にサザンが再開してしまうというパターン。これで多少のストレスが溜まっているメンバーもいたと思う。サザンが停止しちゃっている間、「サザンがそのうち近いうちに始まるから」と待ちに入ってしまう場合もあったんですよね。とにかく、サザンというのは恵まれているんですよね。休止期間は何のための期間だったのか、ソロ活動に励む期間なのか、人によってはポイントがズレてしまった感じがあったんですよね。だから硬い言い方をすると、俗にいう「甘えている」というか「ハングリーじゃなくなってる」感じがしていた。
 この前の報道じゃないですけど、一人歩きするイメージモンスター「サザンオールスターズ」をスタッフが寝ないでバックアップしてくれている。そしてありがたい最高のファンの人たちが全国に居るわけでしょ、彼らに甘えちゃってた気がしていた。無期限というのは並々ならぬ決意なんだと思うんですけれど、メンバーにとっては意味のあることだし、今までより長めのスパンで申し訳ないけど、メンバーには自分の好きなことにトライする時間を与えたい。毛ガニさんにはプレッシャーを与えたくない。私はよく冗談で「奴は4年くらいしかサザンをやってない」とか言ってますけど、彼の痛みとか肉体的に精神的に辛いとは思うんですよ。とはいえこれは遊びじゃないから、中途半端に漠然とした、戻ってくるところがいつでもどこでも確保されているとかという考え方じゃなくて、やるんだったら覚悟や腹決めてやってみようと。やってみろよと。猪木と藤波じゃないですけど。うちのメンバーは良い人間だし優しい人間だし、私のことを気遣ってくれてると思うんですけど、思い切って2009年以降は自分のやりたいことをまず時間かけて、もう一度スタッフとの関係性も構築しなおしながら、この機会に頑張ってやってほしいなあと。私も含めて。ソロ活動と言いましても、私は先日の3月までソロワークをやってましたので、今しばらくは私に限ってはネタ作りとか原坊のお手伝いとか、そういうことしかやることが当面思い浮かんでいません今までのサザン特有の休業のやり方だと、サザンとソロと刻んで刻んでサクサクだったのが何か中途半端だったので、あえて「サザン」の枠組みをはずしてみようと思ったのが「無期限」になった理由です。
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 私が後悔してるのは、できることならコアなファンの皆さんに今の気持ちを宣言する前に何で相談できなかったんだろうな、というところです。「サザン」という屋号が一人歩きしてしまって、「サザン」あってのメンバーとなるのが嫌だしね。そのへんのミュージシャンシップを、まず私が取り戻したいなと思ってます。メンバー5人居まして、私は一人一人が大事で、お互いが居なけりゃここに居ないわけなんですけども。一生のパートナーとして付き合っていきたいと思ってます。だから「無期限休業」というのは永遠にやらないという意味ではありません。そのうちネタが出そろった暁に、機が熟したら戻ってきますのでがっかりしないでください。報道や皆さんの書き込みを見ていると、「皆が大好きなサザンオールスターズ」を私がぶっ壊そうとしている馬鹿な奴に思われるかもしれませんけど、それでも構わないんですけど。世の中の皆さんが見たいのはサザンオールスターズなんだと私は理解しているつもりなので、それはわかってください。しかし私の気持ちでは、日頃の皆さんの夢とか要望、リクエストに答えるのはサザンでは無理かなあと思いましたので、いったんサザンのエンジンを切って、来年以降でも、錆びついた垢とか払い落として、ちょっと思考停止していた部分を鍛えなおして、50過ぎてもできますから、戻って来たいと思ってます。腹の底から燃えて仕事して歌っている姿を皆さんに見せられないと悲しいんですよね。
 みんなで話し合ったといっても私の考え方がベースでこういった形になったのは事実です。どこまで話せば私の、もしくはグループの真意が伝わるかわかりませんけれども。皆さんに納得いただけるかわかりませんけど。でも、格好良い言い方をすると、自分の信じた道を行くしかないでしょ?自分の信じた道を行くしかないと思う今日この頃でございます。ひたすら夢に向かって、明日に向かって行くしかないと思ってます。私も30年やって50過ぎたんだから気軽に音楽をやらせてほしいと言いながら、充電させてほしいと良いながら、楽しくガンガンと音楽、ステージをやっているところを見て頂きたいと思うのが本音でして。ここまでになってしまうと、社会現象になってしまうと、そう簡単にノコノコと出て行きけなくなってしまったと思うのですけれど。
 今までサザンとか仕事についての悩み事や愚痴をよくこぼすんですが、それをほとんど原坊とかマネージャーの相馬さんにぶつけていたんですが、今回皆さんにぐだぐだと酔っぱらいのように話してしまうのも申し訳ないですけど。今回原さんを見ていると、何気に泰然自若というか、達観しているような平常心を感じるんですが、こういうとき女性は強いのか心がでかいのか、そういう存在に私はこれまでも救われて参った気がするんですが。
 常々言ってますが私は人間がセコいんで、もったいないからサザンは絶対解散しません。もったいないからが理由です。解散するならするで相当なエネルギーが必要らしいから、めんどくさいんです。エネルギーがもったいないでしょ?グループを存続する方に大事にしまって、使いたいんですよねエコロジーとして。50になった今ではわがままかもしれませんけども、前向きになれない要素を少しでも抱えていたら皆にお話しますので。でも、ズルズルとサザンの皆と活動するのはちょっとごめんなさいという感じなんです。でも、私は今、ちっとも寂しくはないです。ホントいい活動とか昆布で、納得いく出汁が取れたらサザンという店を開けますのでちょっと待っててください。心配させてお騒がせしてしまって悲しませてしまって本当に申し訳ありませんでした。でも同時にありがたいなと、私たちは幸せだなと感じました。必ずスケールアップして仲良く5人で皆様の前に戻ってこれるように努力しますので、2009年以降になりますけど待っててください。でも、時間をください。グループとしての復帰がいつになるのかは、2009年以降。今日のべた理由含めて、今の時点でちょっとはっきり申し上げることができないこと、こういう考えがあることを許して下さい。
 いまニューシングルをレコーディング中なのですが、大変です。ヒロシ頑張ってます、原さん頑張ってます、関口暴れてます。夏の大感謝祭ライブとか。いろんなことがね、いやうちのメンバー一般人だからね、あいつら傷つきやすいんでね。俺はズーズーしいし馬鹿だからいいんですけどね。とにかく緊張感持ってますようちのメンバーね、ライブとレコーディングありますし。それ相応の覚悟で臨みます。私、ゆうべ考えたんです。今度のライブ、ファン投票で選曲を行います。皆さんよろしくお願いします。悩むのはめんどくさいからやめました。
 これからもいろいろさまざまな憶測があると思いますけど、惑わされずに。難しいけど。おれも時々惑わされてるからね。なにかありましたら逐一、この番組「やさしい夜遊び」でもお話いたしますので、どうかこれからもひとつ!どうかこれからもサザンオールスターズを御贔屓に、そして一人一人のメンバーをよろしくお願いします!クレイジーキャッツを目指して死ぬまで頑張ります!ありがとうございました!!

 「キラーストリート」を聴きながら、2005年末のライブで跳びながら、ふと「これで終わりなんじゃないか」と思って寂しくなっていた私。なので、今回の休止は「とうとう来たか」という感じ。30周年になる2008年はしっかり活動して、09年以降は無期限活動休止。ファンおよび所属会社への仁義とクリエイターとして必要とした要素(バンドを休止して充電およびソロ活動)、両方を尊重した決断だったのではないかと。自分としては、総尺約25分にわたる桑田さんのコメントで納得がいきました。とりあえず、今年は精一杯SASを楽しむとします。
 ちなみに桑田さんはここまで大騒動になるとは思ってなかったそうで、「正直言ってこんなことになるとはいまだに俺思ってなかったんだよね。馬鹿ですね俺って。深く考えられなかったというか。もっとすんなりいくと思ったんだよね」と話してから、「ごめんよ僕が馬鹿だった」を流してました。この日に流れた曲は、「ごめんよ〜」以外に「あなただけを 〜Summer Heartbreak〜」「心をこめて花束を」の計3曲。ライブで「あなただけを 〜Summer Heartbreak〜」を聞いたら、確実に泣くなあ。
 ちなみに、夏のライブのセットリストはファン投票も参考にして決めるとのことで。さて、何が良いでしょうね?考えてみようっと。