オリジナリティの枠を超越したと思しきオリジナリティ「旬香亭 グリル・デ・メルカド」

さらっと入れて@旬香亭GM

 「この店にどう賛辞を送ろうか」と考えている間に、1ヶ月が過ぎてしまった。凄い店に出会ってもうた。あのメロン、あのフォアグラ、そしてあのサービス・・・衝撃の連続だった。中でもフォアグラは、今でも脳内で明確に再現できるほどの衝撃的物体。「料理の鉄人」の料理を中学・高校時代に見様見真似で再現していた私だが、全然何をどうすればあんなのが作れるのか皆目見当もつかない。
 話は2ヶ月ほど前に遡る。月に1度ペースで一緒に喰い倒れている某御仁が、「次回行きたいお店があるんです!」と鼻息荒く私に言った。お店の名は「旬香亭 グリル・デ・メルカド*1。世界最高レストランと言われる「エル・ブリ*2出身の山田力さんというシェフが放つ独創的な小皿西洋料理が評判のレストランだ。店名はなんとなく聞いたことがなくもない。「こやつはなんでこういう系統のお店にこうも詳しいんだ?」と思いつつ、「予約もなかなか入れられないくらい人気らしいので、今のうちから来月の予約しといていいですか?」の問いに、ええよ、と答えた。
 数日後、某御仁から「miz_akさん、なんと山田シェフは7月一杯で退任らしいです(泣)」というメールが。どうやら山田シェフは渡西してしまうらしい。8/1からはそれまでセカンドだった高宮崇シェフが腕を奮うという。とはいえ1ヶ月近く前だというのに、既に7月末の予定はグシャグシャ。「まあ、新しいシェフの味を楽しみに行こうや」ということで、8月初頭にお店をBOOKした。
 さて、当日。二人して向かうも、この「アークヒルズ エグゼクティブタワー」というのがどこにあるのやら状態。プリントアウトした後、プリンターに忘れてきた地図を必死に思い出しつつ、向かう。場所は全日空ホテルの裏手、グイ〜ンと坂を登った天辺の、さらに奥まったところにある。普通じゃ通らんなあ、この道は。お店に入ると、優雅な物腰の男性が、席へ通してくれた。机にはメニューが。まずはその内容を。
                                    
■COCKTAIL:カイピリーニャ
■PINTXOS:スモークサーモン、鱈のペニエ、タンドリーチキン、エスカペーシュ、プルポ ガリエガ、ラタトゥイユのキッシュ、海老のアビージョ
■TAPES:生ハムメロン2004-2006、フルーツトマトのガスパチョ、地鶏のスモーク・ビシソワーズ・キャビア、石ガレイとグレープフルーツのマリネ、ウニのロワイヤル、パエリア ケロッグ、夏トリフのミガスとそのエスプーマ、カリフラワーのクスクス
■PLATS:フォアグラとコンソメ江戸前穴子のスモーク、(和牛フィレ肉のステーキ、ウサギのシヴェ、和牛テールのテンプラリーニョ煮込み)
■POSTRES:メロンクリームソーダ、フランボワーズショートのカクテル
■PETIT FOUS:ホワイトチョコのムース、チョコバナナ、ロッシェ、カボチャの種のシナモン風味、オリーブのマドレーヌ、チュロス ピペット、こぼれないカプチーノ
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 私は思った。「ああ、この中から選ぶのね」。
 ・・・それは間違っていた。これは全部出てくるのだという。選ぶのは上記のうち( )で括った青字部分のみ。なんじゃこの量は!?これは9500円のコース(のはず)なのだが、なんと24皿あるらしい。なんとも女性には「お腹いっぱい」な内容ではございませぬか。12000円のになると一体どうなるというのだ*3。そして、どれをとっても、一つとして「普通」の料理が無い。これを全部レビューしていると何日もかかってしまうので、特にビックラこいたものと、印象に残ったものを。
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①カイピリーニャ
→幾つかのバーやプラッサオンゼ等で飲んできたが、今まで飲んだ中で、一番美味しいカイピリーニャだった。スッキリ感と甘酸っぱさのバランスが絶妙。この後の他日、あの味が忘れられず他店でカイピリーニャを飲んだが、ここのには到底敵わなかった。
②PINTXOS

→一番手前に写っているフリット(恐らく鱈のペニエ)がフッカフカで激ウマ。すきっ腹に刺激的な美味い小品たちだ。カイピリニャとこれで、物凄い「呼び水だよ〜」状態。
③生ハムメロン2004-2006
→写真が無いのが残念な、衝撃の一品。出かたは、皿に載った生ハム(恐らくイベリコ)と、白いスプーンの上に載ったタマゴのようなもの。黄色くて、周りに薄黄の液体が入っている。見た目は完全に生卵だ。「生ハムメロンでございます」という言葉と共に出されたから、「ああ、メロンなのね」と判るのだが。で、「凄くキレイな球面だけど、たぶんメロンをきれいにくり抜いたのね」なんて思って口に運ぶとビックリ!人口イクラと同じ要領で、メロンの「液体」を、メロンの「膜」で覆ってあるものなのだ。一口で、生ハムと一緒にいただくのだが、口に入ったと同時にプシッと弾けて液体が広がる。なんとも衝撃的な食感。ビックラこいた。04-06と名前が付いているので、恐らく今年いっぱいまでしか出ないと思われます。
※ここでタマゴなメロンの写真、見つけました→http://media.excite.co.jp/ism/057/01spanish.html
④ウニのロワイヤル

→茶碗蒸しのようなウニ料理。まろやか・・・茶碗蒸しみたい・・・美味いよう・・・。
⑤パエリア ケロッグ

→こんなものが出てきた。私たちのテーブルの担当である男性が、食べ方を教えてくれる。この試験管の中の物体を、カップのスープの中にサラサラと入れていただくとのこと。入れてる図がトップの写真。これまた衝撃!サクサクとしているこの物体は、パエリアをカリカリに揚げたもの?カップの中は海老の濃厚なスープ。プリプリの海老肉が入っていた。美味い。激烈に美味い。この海老から醸し出される磯のカホリたるや・・・ここは海ですか?
⑥フォアグラのコンソメ
→これは「出したらすぐに食べてください」とのことだったので、写真を撮る暇も無し*4。出てきたのは、「皿ごと凍っているの?」と訊きたくなるほど冷たい皿に盛られたベージュの粉末のみ。・・・なんだこりゃ???ここにスーッとコンソメスープが注がれ、それと同時に掬って喰うべし!ひたすら喰うべし!・・・これが凄い!なんとこの粉末は、(恐らくペーストにしてから)凍らせて粉末にされたフォアグラ。口に入れたと同時にふわっと「気化」したように消える。しかし、口の中に確かに残るフォアグラの味。ななな、なんだこれは・・・(感動)
※ここで写真を見つけました→http://photogourmet.livedoor.biz/archives/50382939.html
⑦PETIT FOURS

→驚く莫れ、これが全て2人分のデザートだ。20皿近く喰った後にこのボリューム。しかし、いずれも衝撃的に美味い。ちなみに、これらと一緒に出てきた「こぼれないカプチーノ」もビックリメニュー。なんとカップが「裏返って」出てくる。「こぼれてないか確かめてください」といわれ、恐る恐るひっくり返すと・・・バシャ〜〜〜。・・・嘘です。カップの底にホイップされたカプチーノが貼り付いていて、それを掬って食べるのでした。まさに「こぼれないカプチーノ」。サッパリとした甘さで美味。
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 しかし、麻布十番といい、広尾といい、このあたりといい、どうも最近「美味いなあ」と思うお店では、とても優雅だけど個性的な男性サーバーが席担当に付いてくれることが多い。今日の御方も非常に個性的で面白い方だった。ラテーンなノリで、何となく藤●隆を思い出す。すんません。カンペキなタイミングで皿の出し入れがなされ、カンペキな料理の頂き方のレクチャーがなされ、帰りには乗り物まで用意されていた。ふむむむむ、カンペキダ。
 うーむ、この店は、ちょっと私には「背伸びレベル」なお店だ。しかし激烈に面白くて美味い。コース料理は、季節に合わせてガラリと変わるらしい。次は秋に行くぞ、絶対。物凄くスペシャリテな飯を食したい時に是非にとお薦めしたき、洗練されたお店です。文句ナシに★★★★★。

季節ごとに行きたくなるお店です「旬香亭 グリル・デ・メルカド

■所在地:東京都港区赤坂1-14-5 アークヒルズ エグゼクティブタワー1F
■TEL:03-3586-6508
■営業時間:
ランチタイム・・・11:30〜15:00(L.O.14:00)
ディナー・・・[月〜金]17:30〜23:00(L.O.21:30)/[土・祝]17:30〜22:00(L.O.20:30)
■定休日:月曜(2006/10/1より日曜とのこと)
■ホームページ http://www.shunkoutei.com/mercado.html

*1:ちなみに、このお店の「デ・メルカド」は、スペイン語の「市場から」という意味らしい

*2:スペインのカタルーニャ地方にある三ツ星レストラン。「el Bulli」と書く。4月から9月までしか営業しない、という驚異の営業スタイルを持つ。予約は常に一杯で、1年先じゃないと予約を入れられないらしい。料理のスタイルは極めて独創的。天才と呼び声高いフェラン・アドリア氏がシェフを務める。el Bulli 1998-2002 エル・ブジ 至極のレシピ集―世界を席巻するスペイン料理界の至宝 (世界最高のレストラン―スペイン編) エル・ブリ 想像もつかない味 (光文社新書)

*3:このお店のコースは、7500円、9500円、12000円の3種類らしい

*4:そもそも論的に写真を撮るな、という話なのだけど