記憶の手帳

夏休みの残照。しんみり。

 今月も校了間近。気は焦るも遅々として作業は進まず。「どうする、俺?」と自問しながら、都内某所で「大富豪」に興じて現実逃避を繰り広げ、癒されて居りましたmiz_akです。運もデカいですが、「あのカードはもう切られたからコレだしても大丈夫かなあ」とか、記憶力も大事かと*1。2戦のみでしたが、勝負事は燃えますな。
***
 記憶力といえば、先日実家に帰った際にこんなことがあった。
 実はmiz_akの父方のバアちゃんは、ボケ、いわゆる痴呆が半年前から始まった。かといって一人暮らしは止めたくないとのことなので、miz_akの父母が週に1度、夜飯を食いに行きがてら様子を観に行っていた。半年経って実家に帰ると、「この1〜2ヶ月で加速度的に痴呆が進んでしまった」と母が言う。どうやらガス式の風呂の炊き方も判らなくなったらしく、今ではほぼ毎日、父母が交代で風呂を炊きに行っているらしい。
 記憶というものは「六穴式システム手帳」のようなもんで、心棒的な部分に一つ一つの記憶が時系列に沿って繋がってて、それを思い起こすということは、イコール手帳のページを繰るのと同じことであるらしい。痴呆にかかるとは、この心棒の接着力が落ちることみたいなもんだそうで*2。『私の頭の中の消しゴム』じゃないが、最近のものから祖母の記憶はどんどん消えたらしく、最近会った人のことは全く覚えていない、昨日のことも覚えていない、父が目の前に居るのに「今日はS(=父の名前)は来ないのかね?」と訊く・・・これはかなりの重症だろう。先日、従姉妹が祖母の家を訪れたらしいのだが、キレイサッパリ誰のことだか判らず、「名前も呼ばなかった(母談)」とのこと。黙して聞く私に母がこう言った。「今のうちにおバアちゃんに会っておけば?」
***
 長い休みには足繁く祖母の家を訪ね、泊まっていったりしていた従姉妹と違って、どうも父に似てしまって無精なmiz_akは、もう10年以上祖母の家から足が遠のいていた。正月に帰った時、ウチに祖母が来ていると会ったりするくらいだ*3。「まあ、完全に忘れられてるだろう」。それならそうで冷静な対応もできるだろ、と覚悟を決めて祖母の家に向かった。
 祖母は市の中心の集合住宅*4に住んでいる。ひどくゆっくりしたエレベーターで昇って、祖母の家へ。ピンポン鳴らしても出ない。「寝てるのかな」と言いながら母が電話を入れると、どうやらTVを見ていて気付かなかったらしい。祖母がドアを開ける。
                                           
 「ごめんねえ、気付かなくって。あら、akちゃんも来たの?」・・・母が驚いて私の顔を見た。
                                        
 私が覚えられていたのは何故だろうなあ、と考えながら祖母の家をぐるりと見渡す。柱には従姉妹と背丈を計った跡。思えば私が絵を描いていたのもピアノをやり続けたのも、恐らく祖母の影響だ。この家には、私が幼稚園や小学校のころに描いたスケッチブックが今も残されている筈だ。・・・そんなことを思うと非常に来るものが在るもので。しかし悲しいことに、祖母の記憶は私が居るたった30分ほどの間ですら、ぼろぼろ崩れるようにあやふやになっていった。たぶんあの翌日には、私が来たことすら忘れてしまっただろう。
***
 1年ほど前、後輩と飲んでいて、明け方4:00頃にこう問われた。「miz_akさんが一番なくしたくないものは、何ですか?」
 答えは「記憶」、即答である。よく、人に「異常に記憶力が良い」と評されるのだが、たぶんモノと同様、記憶も捨てるのが嫌だからかなあ。しかし、世の中には隔世遺伝というものがありまして。忘れるということも幸せなことかもしれないが、記憶が消えるのは・・・・・・できれば避けたいなあ。
 以上、喰いだおれブログの中では異質な雑感でした。忘れないよう覚え書き。・・・ああ、重要なことを思い出しました・・・原稿原稿見積見積・・・ひぃいぃぃぃ〜〜。

*1:ま、ジョーカーあがりしちゃダメなのをスッカリ忘れて、チョンボをしでかしたりもしたのですが

*2:父が言っていることなので、彼の私見の可能性98%

*3:昨年の正月は一緒に家族麻雀をやった。今年は一緒に打つ事も出来なかったけど

*4:マンションというには、あの古さは・・・