名盤!!「キラーストリート」①

石垣の青

キラーストリート (初回限定盤DVD付)
ちょくちょく言及しておりますSASのニューアルバム「キラーストリート」。「さて。」といざ書こうとして、己が音楽と言うもの(及びその歴史)を全然分かっていないことがよく判った。勉強しなくては。ということでこの感想には覚え書きも兼ねてキーワードを載せておきます。
このアルバムは、60・70年代の洋楽(ロック)・邦楽という桑田青年のベース(と思われるもの)とラーガやブルース、ソウルを混交させた、桑田佳祐の人生の集大成的作品だと思う。まだ店で買えるなら、絶対DVDとブックレットが付いた初回限定版を購入することをオススメ。ブックレットは桑田佳祐のセルフ・ライナー・ノーツが収録。DVDは本アルバム収録をドキュメンタリータッチで追ったもの。いずれも非常に面白いですよ。
ちなみにDISC1の中での私のベストは「限りなき永遠の愛」。ベタですけどね。

サザンオールスターズキラーストリート」DISC1

凡例
●はシングル発売日(アルバムオリジナルは「アルバムオリジナル」と表記)
▲はCDの特典の桑田さんによるライナー・ノーツで、名前が挙がった(恐らく影響を及ぼしている)アーチスト、グループの名前
△はライナー・ノーツ中に挙がったキーワード。後に勉強するための覚え書き。
★はムリヤリ上下つけてますが、素晴らしく楽曲のツブが揃った名盤です。いずれもオススメ。
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01.からっぽのブルース(★★1/2)
●アルバムオリジナル
ポール・マッカートニー
サイケデリックなラーガ風ロック
今回のアルバムには「ラーガ」がキーワードで挙がる曲が2曲入っている。ラーガとは、シタール等を使った北インド古典音楽におけるメロディーのシステムのことで、夜明けを表現する「アヒール バイ ラブ」やら日没を表す「プリヤ」など、その数数千に及ぶ種類があるらしい。
ラーガについてはこちらを参照→http://www.kenjiinoue.com/rag&tala%20.html
この「キラーストリート」は、桑田さん曰く是非収録順に聴いて欲しいらしいんですが、その1曲目にふさわしい船出しそうな壮大な曲。ライブの1曲目、これになりそうな予感がするなー。なんとなく。
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02.セイシェル 〜海の聖者〜(★★★1/2)
●アルバムオリジナル
AOR、スワンプロック、7th系ピアノオブリガード
聴くときにその曲と一緒に脳内で映像が流れる曲は、私の中で非常に良い曲に分類される。この曲は「海」それも「大海」が脳裏に浮かぶ曲だ。これはトラディショナルなSASの曲、という気がするなー。初期のSASのバラードの匂いがするんだけど、どうでしょう?ちなみに、ライナーノーツで桑田さんが「セイシェルに未だ行ったことがない」と書いていて笑った。
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03.彩 〜Aya〜(★★★)
●シングル:2004/4/14リリース
この詞は桑田さんの亡き父に捧げているらしい。「もう二度と逢えないと知りながら涙」に涙。曲の最後のアレンジは赤ちゃん用のモーションモビールみたいでホノボノしますな。
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04.JUMP(★★★)
●アルバムオリジナル
▲スライ&ザ・ファミリー・ストーン、スティービー・ワンダー
ソウルフルな感じとオーラスの電脳系アレンジのアンバランスな感じが面白いよね。なんだかJBに歌ってみてほしい感じ。
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05.夢と魔法の国(★★1/2)
●アルバムオリジナル
ニール・ヤング&クレイジー・ホース
タイトルと似合わない哀愁溢れるロックな曲。台無しにされそうな休日のイベントを守るため、必死に怒るオヤジを歌っている(の?)詞は哀れでちょっと笑える。ところで、この「夢の魔法の国」って、ディズニーランドのこと?
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06.神の島遥か国(★★★★1/2)
●シングル:2005/3/15「BOHBO No.5」に収録
私は沖縄が好きだ。ここ数年、1年に1回は行くほど好きだ。去年は石垣島に行った。レンタカーで島を一周し、美味すぎる焼肉(←ここでもか!)を食べ、マンタスクランブルに近い川平地区に4泊逗留。地区にはバーが2軒あるのだが、その1軒が行けば「また来たのか!」と怒られ遅れると「遅い!今日は来ないかと思った」とオヤジに怒られるバーで、そこで4晩ともガツーンと泡盛を飲んで、朝7時過ぎにはスパっと起きて、ひたすら水深20Mにも関わらず海底が見えるほど美しすぎな海に潜って過ごした。至福。この曲は、あのマンタや八重山そば、美味い「シマ(泡盛)」、そして何より石垣の風と海と緑を思い起こさせる。トップの写真は石垣の海。また行きたいなぁ。
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07.涙の海で抱かれたい〜SEA OF LOVE〜(★★★★)
●シングル:2003/7/23リリース、「僕だけのマドンナ」(TV)主題歌
筒美京平円広志(「夢想花」)
△70年代のアイドル曲
のっけのホーンとか、歌いだしのメロディアスな感じとか、サビに至る二拍三連のくだりとかに漂う「70年代初頭の懐メロ感」が、非常に気持ち良い曲。これ、カラオケで歌うと結構な酸欠になります。でも、それもまた気分良し。
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08.山はありし日のまま(★★★)
●アルバムオリジナル
ノラ・ジョーンズザ・バンド
△ダウン・トゥ・アース
原坊ヴォーカルの曲その1。インターミッション的な優しい曲。これまでのサザンの曲にはあんまり無い感じじゃないかしら?これを聴くたびキャンプファイヤーをやってる気分になります。
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09.ロックンロール・スーパーマン 〜Rock'n Roll Superman〜(★★★★)
●アルバムオリジナル
▲ボラン・ブギー、トニー・ヴィスコンティジョージ・ハリスン、スペクター、T・REX
△ラーガ、ソウル、グラムロック
この曲、イントロのテイストは完全にT-REXの「ゲット・イット・オン」ですな。(T-REXとは→http://www.cdjournal.com/main/artist/artist.php?ano=119907
「JUMP」と「夢と魔法の国」、そしてこの「ロックンロール・スーパーマン」は、ソロのKEISUKE KUWATAの匂いが残っている楽曲だと思う。ちなみに仮タイトルは「電気男」らしいです。
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10.BOHBO No.5(★★★★1/2)
●シングル:2005/7/20リリース
ジョン・ロード
今でこそサザン狂を自認してますが、実は大学時代にはちびっとサザンを敬遠していた時期があった。「だって歌詞が・・・」と。オンナノコにはありがちな嫌がり方ですな。ちなみに「BOHBO〜」は、その頃の私だと「えええ」とちょっと引きそうな歌詞。でも、SAS(の歌詞)の良さは語感とノリと猥雑さなのだ・・・とすると、この曲は非常にSASらしい良い曲だと思う。
この曲も先日友人とセッション。ラストで半音音を間違ってしまった(曲は壊してないけどね)のだけど、まぁ大方合わせることができて、二人で親指立てて「グッジョブ!」。声質と声量が合う歌い手とハモるとめちゃくちゃ楽しい曲ですよ。当分の間、カラオケの定番としよう。
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11.殺しの接吻(キッス) 〜Kiss Me Good-bye〜(★★)
●アルバムオリジナル
ニーナ・シモン
△マイナー調ジャズ
色気ムンムンでビッチな歌。『シカゴ』のキャサリン=ゼタ・ジョーンズに是非歌ってもらいたい感じ。日本語話せないって。
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12.LONELY WOMAN(★★★★)
●シングル:2004/11/24「愛と欲望の日々」に収録
ブルー・アイド・ソウル
この曲、当時最新シングルだった「愛と欲望の日々」のカップリング曲だったのに、昨年末のライブでは演奏されなかったんですよねー。良い曲なのに、何故だ。桑田さんはこのアルバムの中ではこの曲が一番気に入っているようです。
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13.キラーストリート(★★★★)
●アルバムオリジナル
エンニオ・モリコーネニーノ・ロータピエル・パオロ・パゾリーニ
ガロの「学生街の喫茶店」といったグループサウンズのテイストが流れるインスト曲。私の一番初めの上司M氏は、昔、アイドル誌の編集をしていたことがあったそうで、何とその時にサザンのライブ取材→打ち上げ参加をしたことがあるんだそうだ。で、「当時は皆で朝まで騒いだ後で、皆で後片付けをして帰ったもんだよ」と聞いたことが。なんだか「皆で後片付けしてる」さまって、思い浮かべるとカワイイ。そのMさんと当時千駄ヶ谷にあったT社にお邪魔する際に、そんな話をしながら散歩がてら外苑前から歩いてビクタースタジオの前を通った。そう、この「キラーストリート」のある街だ。この曲を聴くと、その頃のことを思い出す。そしてちょっとだけ寂しくなる。
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14.夢に消えたジュリア(★★★★)
●シングル:2004/7/21「君こそスターだ」とダブルA面
▲ジュリー、トッポ、ショーケンピンク・フロイド
グループサウンズや70年代の歌謡曲エスプリ漂う曲。ライナーノーツによれば、「匂艶NIGHT CLUB」「HOTEL PACIFIC」の系譜を辿る「歌謡パーティサウンド」を標榜したらしい。アルバム版は非常にゴージャスなアレンジです。ちなみに伊豆七島に伝わる“おたあジュリアの伝説”なる民話(?)とこの曲の歌詞が似通っていることが後で分かったらしい。ちなみにこの“おたあジュリアの伝説”とは、江戸初期にキリシタン弾圧で流刑された朝鮮出身の女性キリシタンの話なんだそうな。下記のサイトで紹介されていたので、興味のある人はどーぞ↓
http://www5.hokkaido-np.co.jp/kyouiku/fumfum/main-2005/0827/
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15.限りなき永遠の愛(★★★★★)
●アルバムオリジナル
▲ニッキー・ホプキンス、ジム・ケルトナーポール・マッカートニー
「“ロックンロールとは悲しみを大声で歌ったものである”誰かがそんなことを言っていた。同感である。」とこの曲のライナーノーツで桑田さんが語った。私も同感だ。この曲のイントロのピアノは非常に美しい。詞も、メロディも非常に美しい。しかし、これを書くために聴く今ですら、とても悲しくなるのはなぜだろうか。
過ぎ去った日々を思い出語りしながら「今もこれからも君を愛し続ける」と歌う、THE BEATLESの「IN MY LIFE」という曲がある。「永遠でなくなってしまった時間」を思いつつ、「永遠なるもの」を語る。これほど悲しい歌は無いと思う。でも私は最も愛すべきラブソングだと思う。
「限りなき永遠の愛」は、「永遠」と云いつつ、美し過ぎるメロディと詞がその語る愛の時限性を思わせる。ゆえに悲しくなるのかもしれない。細かなところのBEATLESを思わせるアレンジが心地良い曲。あの名曲と同じくらい好きになる予感がする。