レトロ&レトリカルな陰陽師系サスペンス「姑獲鳥の夏」

川崎チネチッタにて鑑賞
昭和27年、東京。雑誌での雑文執筆で糊口をしのぐ小説家・関口のところにとある依頼が舞い込む。それは「20ヶ月もの間妊娠をしている女が住んでいる」「婿養子の夫が失踪した」といった数々の噂が渦巻く、とある産婦人科医院にまつわる原稿を執筆する、というものだった・・・。
京極夏彦のデビュー作である同名小説を映像化したもの。それぞれ映画でピンを張るくらいの演技派俳優たちが一堂に会して、警察、探偵、小説家、雑誌記者、そして陰陽師(本作では「憑物落とし」という「職業」になっている)入り乱れる推理サスペンスを彩っている。実相寺監督による70年代の「ウルトラマン」「怪奇大作戦」といった作品の空気が、上手くこの作品の「レトロテイスト」に転化されているなぁ、と思う。レトロテイストといえば池田敏春の「ハサミ男」も、非常に「ハングマン」「Gメン'75」とかの70年代ドラマの空気が息づいた映画だった。ところで「姑獲鳥〜」に話を戻すと、主役の京極堂堤真一は冒頭の長台詞はすばらしかったのだけど、全体的には永瀬正敏の存在感に食われた感。でも、永瀬すげぇなあと思っていたら、クライマックスでいしだあゆみが「全て持っていく」キレキレ演技をみせていた。ていうか、この作品のどこが怖いかって、いしだあゆみが一番怖い。
観賞後にチッタのイタ飯屋でパスタ食いつつパンフレットを一心不乱に読みふけっていたら、あまりに「一心不乱」で「コイツは何を観たんだ?」と気になったのか、テーブルチェック時に店員のにいちゃんから「何を見てきたんですか?」と聞かれた。パンフを見せつつ、ごくごくサワリまでの粗筋とこの作品の良かったポイント(1つにアクの強い俳優の競演、そして、3つの謎をそれぞれ追っていくストーリー展開自体と、それが繋がった時の爽快さ、あと、それを語る映像のレトリック)を話すと、「いつまでやってんスか?この映画。観たくなってきた・・・」と。「今週末で終わるけど、ビデオで観てもきっと面白いよ」とクチコミっときましたよ、Mさん&Sさん!